詰連珠って何?

 「詰将棋」や「詰碁」といえば、一般的に同じルールのものを指します。もちろん、詰将棋では双玉はもとよりフェアリーと呼ばれる分野があり、さまざまなルールがあります。また、詰碁においても死活だけでなく、死活に関わらない問題もあります。それでも、「詰将棋」「詰碁」は、一般的に等質の作品になります。
 しかし、「詰連珠」は大きく4つの分野からなり、それぞれが全く異なる様相を持っています。

まずは基本。の2種類の《追い詰め案》

 《追い詰め案》とは、「追い手」の連続で勝ちに至ることを命題とした詰連珠です。「追い手」は、「四」「三」「ミセ手」「フクミ手」「ネライ手」の総称です。
 《追い詰め案》には、出題方法の違いから大きく二つの種類があります。《最短手順の追い詰め案》と「制限のない」ただの《追い詰め案》です。《最短手順案》は、実戦や研究の一局面を「検勝」として出題し、解答の「打ち上げ珠数」の多寡を採点基準としていた頃からの伝統になります。
 「打ち上げ珠数」とは、勝ちに至る最後の四追いを、四追いの回数に関わらず1手と数えた手数です。例えば、3まで打って、5から10回の四追いでも、20回の四追いでも同じ「5珠打ち上げ」となります。5まで打って、次四三(=1回の四追い)の場合は、先の案より使った石の数は少ないのですが、「7珠打ち上げ」になります。これを採点すると、5珠打ち上げ案が7珠打ち上げ案より高い得点を得ることになります。すなわち、《最短手順案追い詰め案》とは、「いかに早く四追い勝ちの局面を作るかを問う問題」と言い換えることができます。
 《最短手順案》では、実戦・研究を元にすることが多く、ほとんどの場合、詰手順が一通りとは限りません。「追い手」の幅は広く、出題者の予想もしない妙手が飛び出すことも度々あり、古くから「原案が正解となることはまずない」といわれるほどです。すなわち、「出題者の作品」ではなく、「解答者たちの作品」が《最短手順追い詰め案》なのです。
 現在でも、珠順のある追い詰め案は《最短手順案》として出題され、解答競技に用いられます。解答の採点競技用としては、勝ち自体の難易度ではなく、最短手順にすることの難易度が重要になります。なお、《最短手順案》では「余詰め」という概念がありません。

 これに対し異議を唱えたのが詰連珠家として有名な故・坂田吾朗九段で、実戦の軛から解き放てば、唯一の作意のみを正解とする追い詰め案が出来るはずだと主張しました。背景には実戦とは何か?という問いかけもあります。二人の人物が盤を挟み、一手ずつ交互にある詰連珠を並べたら実戦であると主張できるのではないか、とうことです。「実戦あるいはそれに近いもの」を求めることの無意味さを質した話です。
 この「制限のない」《追い詰め案》では原案の質が非常に重要です。坂田氏のいうところの「詰む連珠」では駄目だということです。「詰む連珠」とは、追い手を続ければなんとなく勝ててしまう問題に対する呼称で、自らの目標である「詰連珠」との差を表すのに坂田氏が良く使った言葉です。
 「詰連珠」であるためには、作者の意図である「作意」が手順の中で生きた作品であることが必要です。作意以外の勝ちを「余詰め」と称し、余詰めがあると作品としては失敗となります。残念ながら、《追い詰め案》はいまだに未完成の領域です。作者の技量が向上し余詰めのチェックが十分言出来るようになるには、まだ時間がかかるでしょう。現在この域に達した作家は、中村茂第七世名人くらいでしょう。

《四追い案》

 四追い案は追い詰め案の最後だけが独立した詰連珠です。使用できるのは「四」のみで、防ぎ方に「五」ができない限り、防ぐ手はただ一つに限定されます。その単純さ故、愛好家も多く、作品の芸術性が最も高い分野です。
 古くから、コンピュータを使った調査が行われ、多くの四追い作家の努力で作品の質も著しく向上しています。是非、色々なタイプの作品を楽しんでいただきたいと思います。

《限珠案》

 限珠案は今まで説明してきた詰連珠とは根本的に異質です。求めるのは「決められた手数」のみで、そのためなら(連珠のルールの範囲で)何をやっても構いません。防ぐ側も同じで、手数を増やすためならどういう防ぎ方をしても構いません。つまり、「追い手」にこだわる必要がないということです。
 「決められた手数」にはよく使われる出題形式があり、代表的なものは「1手勝ち」「2手勝ち」「3手勝ち」「3手五連」「4手五連」「5手五連」の6種類です。最短手順案の時のように、最後の四追いを1手として数えることはありません。かかった石数はすべて有効です。
 6種類の出題形式の中では「2手勝ち」古くから盛んに作られてきました。これには大道五目の影響もあったと思います。わずか2手なのに、その中に複雑なドラマを組み込むことができるという、単純さと複雑さのバランスが良かったのでしょう。しかし、徐々に作家がより複雑なものを望み、「2手勝ち」の枠を拡張していきます。すると同じ「2手勝ち」でも、余詰めになったり不成立だったと不都合が出てきます。この点を解決したのが「4手五連」という出題形式です。
 「4手五連」は現在、限珠案コンクールの影響もあり、最も多様なアイデアを生み、多彩な作品群を形成しています。